追い抜かないで

昨日は3年ぶりに帰省してきました。同じ県内なのに部活だ受験だと理由をつけては避けてきた里帰り。小さい頃は帰るのが嫌でダダこねたり、帰ってきても夜にはおばあちゃんちに戻りたくて泣いたりしてたのに。人間関係のギクシャクに敏感な身としては、あの家に長居するのはもう辛すぎる。
玄関を開けた瞬間、見たこともない小さいダックスが全力で突進してきました。1年ほど前、同居するおばさんがある日突然買ってきたらしい。「最近やっとトイレも覚えて…」とおばあちゃんが言ってるそばから、嬉しくて粗相しちゃうようなバカ犬。初対面なのになつかれまくって、なぜか少しイヤな気持ちになりました。
庭に出ると、いつもの鳴き声が聞こえない。私が6歳の頃にやってきた、当時3歳の愛犬はもう人間でいうと90近いそうです。私が窓からちょっと顔を出しただけでも大騒ぎして、散歩のときはいつも全力疾走するくらい元気だった子。もう耳も目も遠くなって、いろいろなことを忘れてしまったみたいでした。四六時中揺れていたクルンと丸まったしっぽが、ダラリと垂れ下がっているのを見て、急に悲しくなってしまいました。
水を飲んで、こっちにやってきて、軽くすり寄って、また水を飲む。それを何十回と繰り返していました。きっともう私のことは覚えてないんだろうな。それでもいいや、と思ってしばらく傍にいました。
「ばいばい」といって頭をなでて家に戻ろうとすると、よぼよぼと歩いてきて、じっと家の方向を見つめていました*1。帰り際に庭を覗くと、同じ姿勢でこっちをじっと見ていました。相変わらず騒がしい子犬に、昔のあの子を重ねたりはできませんでした。

*1:正確には何も見えてないんだろうけど。